「いつか使うかもの〈いつか〉は絶対来ない」という発言の落とし穴

「いつか使うかもの〈いつか〉は絶対来ない」というのは本当か

巷で売られている片づけ本や収納本。多くの書籍にあるのが、「いつか使うかもと取っておいても、その〈いつか〉は絶対に来ません。だから手放しましょう」という文言です。

 

絶対と言い切る強い口調に、そこまで言うならそうなのかもしれないと心がざわつき、そう言われてみれば引き出しの奥深くに全く使われないまま眠っているモノがあったと思い出し、これ以上取っておいても使うことはないのかと処分を決意。あるいは、使わないかもしれないけれど処分はできない、だから私は片づけられないのだと、自己嫌悪とともに家を整えることを断念。処分するしないにかかわらず、あまりによく聞くその発言が、大きく影響していることは確かです。

 

しかし、「いつか使うかもの〈いつか〉は絶対来ない」というのは本当でしょうか。実は、所有者の行動や考え方が、〈いつか〉の到来を遠ざけているだけかも知れません。

取っておいたモノが使われない、その理由

まず、どうして取っておいたモノが使われないまま溜まっていくのか、その原因から探っていきましょう。考えられる理由は二つあります。一つ目の理由は、適当にしまい込んでいるから。

 

いつか使うかもの〈いつか〉というのは、要は使う時がはっきり分からないということです。ですから、その〈いつか〉は、突然やって来る可能性が高いでしょう。その時に、それを持っていることを思い出し、すぐに出せるようにしておかなければ、活かすことができません。

 

ところが大抵の場合、持っているはずのモノがどこにあるのか見当もつかない、あるいは持っていることをすっかり忘れてしまっているということになり、そのため絶好のタイミングをみすみす逃してしまうのです。言うまでもなく、見つけられなかったり思い出せなかったりするのは、適当にしまい込んでしまっているのが原因です。それによって起きるマイナスは、せっかく持っていたそのモノを活かすことができなかっただけでなく、結果、持っていたにもかかわらずまた同じモノを買ってしまうという、お金の無駄遣いまで引き起こしてしまいます。

 

そして、二つ目の理由。それは、活かそうと考えていないからです。

 

いつか使うかもというのは、そのモノをいつか活かすために残しておく行為です。ところが、「何に活かすか」という目的を曖昧にしたまま保存する、あるいは、目的を決めているにもかかわらず行動と結びつかせないまま保存するという場合があります。つまり、「使うかも」と言っておきながら、実は使うことをあまり考えておらず、しまい込むことで行為を完結させてしまっているのです。

 

ひとつ、実例をご紹介しましょう。

 

以前片づけに伺ったお宅で、缶ビールの空き箱いっぱいに詰められたポケットティッシュが4~5箱出てきたことがありました。それは、数十年前に倒産した大手証券会社のチラシの入った無料ティッシュ。それが何十年もの間使われずに置かれていたということは、見事にジャストサイズだった空き箱にポケットティッシュをピッタリ収めたことで満足し、その行動をそこで完結させていたということ。それではティッシュを持っている目的が、活かすことではなく収めることになってしまいます。

 

いつか使おうと取っておきながら、実は使おうとは考えていなかった、あるいは、思っていたとしても、その思いと行動が一致していなかったということになります。

モノを活かすために必要なのは「保管」です

では、どうしたら持っていたそのモノが活かせるようになるのか。それは、保存と管理をしっかりとすること。つまり「保管」です。

 

まずは、いつか使うかもというモノが出てきた時に、すぐに保存に走ることなく一度立ち止まり、そして考えましょう。そのモノの活かせそうな場面を、具体的に想像してみるのです。ここで、いくら考えても一向に活かせる状況や方法が思いつかないのであれば、それはその人にとって必要のないモノ。その場合の〈いつか〉は本当に来る可能性が低いので、残念ながら手放すことを考えましょう。

 

ですが、実際に活かせそうな場面が想像できるのであれば、可能性は十分にあります。それに沿って保管する目的を決め、そして、その目的に見合った保存場所を決め収納します。

 

更に、保存したものが保存だけで終わってしまわないように、そのモノが活かされるように管理をしてきます。

 

具体的にはどうしたらいいか。先ほどの長年置かれていたポケットティッシュを例にとって考えてみます。ただ収納するだけだった目的を、使うこと/活かすことにシフトチェンジさせます。

 

まずは、ポケットティッシュ本来の使い方。身支度の場所にハンカチと一緒に置いておけば、有料のポケットティッシュを買うことはなくなります。それでもなかなか減らなければ、家じゅうの箱入りティッシュを隠し、代わりにポケットティッシュを出しておきます。

隠してしまうのは、両方出していたら、いつものティッシュボックスを使ってしまうからです。

それでもなかなか使いきれず、消費速度が遅くてもどかしいと思うのであれば、皿洗い時の油拭き用としてキッチンに備える、掃除道具の場所に常備し簡単な拭き掃除の使い捨て雑巾として使うなど、できるだけ早く消費する工夫をし、積極的に使っていくことを考えます。

 

モノはしまい込んでいても、役に立つことはありませんし、当たり前ですが、モノが勝手に自分を活かし始めることもありません。所有者が活かすことを積極的に考えないから、「いつか使うかもの〈いつか〉は絶対来ない」のです。

 

やみくもにモノを抱え込むのはよくありませんが、片づけを処分だけで進めるというのも、これまたよくありません。使える場面が具体的にイメージできるモノは、きちんと保管をしていきましょう。それにより、モノはちゃんと活かされます。