事例で実感!職場の「忙しすぎる」を解消するには、職場環境のカイゼンから!!

忙しくていつもバタバタとしている職場。人手が足りないからとか、仕事量がキャパシティを超えているからとか、挙げられる忙しさの原因はさまざまです。

 

その原因の一つとして、雑然とした職場環境があります。職場のあらゆる場所が整えられていないために手間が取られ時間がかかり、結果忙しさに拍車がかかってしまうのです。ですから、目の回るような忙しさを解消するためには、環境を整える必要が出てきます。

 

あなたはそれを聞いて、「こんなに忙しいのにそのうえ片づけるなんて、できるわけがない」と、そう思われるかもしれません。ですが「忙しいからできない」ではなく、「忙しいからこそしなくてはいけない」のが片づけなのです。

 

なぜなら、片づけることで時間や手間といった多くのロスを解消することができるからです。人手が足りなかったのも、職場が機能的に作られていなかったために、より人の手を必要としているだけかも知れないし、仕事量がキャパを超えていると感じていたのも、職場が整えられていなかったために、余計な時間や手間を取られていただけなのかも知れません。

 

ですから、どんなに忙しくても、先々のために一度片づけに時間を充て、職場の土台づくりにしっかり取り組んだほうが、結果的に忙しさを解消することができるのです。

 

そこで実際の事例を見ながら、職場環境の改善の必要性とその効果について考えてみましょう。

 

見ていただくのは、介護施設に置かれている事務所の棚ひとつです。たったそれだけの小さな範囲にも、驚くほどの改善点が見つかります。

改善点1【重ねられているモノは重ねないようにする】

 現状:いろいろなモノが横倒しになり、棚の中に重なり合った状態で詰め込まれています。

 

例えば、書類や書籍の類。これらは背表紙が見えない状態で重なっているため、置かれているモノが何であるのかひと目で判断することができません。また、文具のような小さいモノも重なり合って収納されています。これでは、目当てのモノを見つけるのにも時間がかかり、下のモノを取る場合には、まず上のモノを動かすという手間が必要になります。

 


 

改善:そこで、横倒しになり重なっている本や書類は、立たせます。必要であればファイルボックスなどを利用します。薄いモノも立てて収納ができ、またどこに何がはいっているか一目瞭然になります。

 

文房具などはそれぞれが小さいために、この形状の棚にそのまま入れても使いやすくなることはありません。カゴを使って立てて収納する、浅い引き出しボックスに平置きするなど、小さなモノの収納に適した形状の収納アイテムを合わせて使うことで、重ならないように改善します。

 


改善点2【まとまっていないモノはまとめる】

現状:同じ作業で使うモノが、ひとまとめに収められていません。

 

この場合は、施設利用者が使う文房具。利用者の座るテーブルに持ち運び、塗り絵や切り絵などのレクをするのに使用しますが、それがひとまとめにカゴなどに収まっていないため、いちいち個々に取り出し運ぶ必要がでてきます。作業で使うモノを集めるのに手間がかかり、また漏れも発生します。

 

改善:同じ作業で使うものは、最初からカゴ等にひとまとめにして一度に出し入れできるようスタンバイさせておくと効率的です。使用時にいちいち棚の各所から集める必要がなくなり、漏れもありません。

改善点3【分けられていないモノは分ける】

現状:収められているモノが、適切に分けられていません。

 

この棚は、取り出すのにとても便利な場所にあります。ということは、モノの特等席。収めるモノを使用頻度の高いモノから厳選して入れていかないと、特等席の無駄遣いになります。ところが、使用頻度の高いモノを選んで収めているつもりでも、量を間違えてしまい無駄を発生させてしまうことがあります。

 

例えば、同じ糊が何本もあるようなケース。糊というカテゴリーで分けると、同じ場所に全てを収めることになります。ですが、実際は1~2本あれば十分に事足りる。だとしたら、残りの糊はここに入れると適正量オーバーになり、特等席を無駄に使っていることになります。

 

改善:オーバーした糊はストックという、今使っている糊とは別カテゴリーとし、ここではない別のスペースに保管しておくべきでしょう。さらに、その保管場所を明記しておけば、スタッフの誰もが簡単に補充ができるようになります。

 

同じ種類のモノであっても、今使っているモノとストックするモノとを別保管することで、無駄を防ぎます。

改善点4【見えないモノは見える化する】

現状:中に何が入っているのか、瞬時に判断できないモノがあります。

 

例えば、小物を入れる引き出し。この状態では、開けてみないことには中身が何か分かりません。何かを探している場合や何かを戻そうとしている場合、この状態では時間と手間がかかります。へたすると、新たに購入してしまったり、定位置でない場所に戻してしまったりという、さらなるマイナスを生み出すことにつながっていきます。

 

改善:そこで、ラベルなどで中身を表示し見える化します。それにより、どこに何が入っているのか、いちいち引き出しを開けなくても知ることができるうえに、どこにしまえばいいのかも一目瞭然になります。そのため、いちど整えた引き出し内はリバウンドしにくくなり、整った状態をキープできるのです。

 

ラベルは場所を明らかにするだけでなく、乱れることを防ぎます。複数の人が使う場所はなおのこと、外から見て中身が分かるようにしておくようにしましょう。

改善点5【必要ないモノは省く】

現状:必要がないと判断したら、取り除かなければなりません。ただ、最初からあったモノや長いことあったモノが、実は必要がなかったとはなかなか気つきにくいものです。

 

この場合の必要のないモノとは、棚の扉。立て付けの悪い扉は重く、開け閉めするたびに大きな音をたてていました。そのため、絶えずどちらか一方が開けっ放しのまま。引き戸というのは、開けられるのは半分だけで、片方を開けたらもう片方が閉まります。全体が一度に見渡せないのは、かなり非効率でした。

 

また、この棚は施設利用者からは見えない死角に置かれていたため、特に見た目を気にする必要もありません。見た目よりも機能を重視していい場所でした。

 

 


 

改善:以上の理由から、この扉は必要なしと判断され取り外し処分。すると、たえず全体が見渡せるため、すぐに必要なモノが探し出せ、重い扉を開け閉めするストレスからも解放されました。

 

本来、扉はあるのが当たり前。必要ないとはなかなか気づきにくいのですが、固定観念を取り払うことで、今まで気がつかなかったロスを発見できるのです。

 

改善点6【作業する場所を作る】

現状:棚の上にモノがごちゃごちゃとモノが置かれています。

 

見た目の悪さに加えて、作業効率の低下を招いています。棚のモノを出し入れする時にいったん置く、取り出したモノを使って何かを作るなど、作業ができる場所を近くに確保していないので、使い勝手が悪くなっているのです。

 

改善:収納は、収まっているモノを使いやすくし活かせるようにするのが目的です。ですから、ただ入れておけばいいというものではありません。収められているモノを使うための作業スペースも同時に作る必要があります。

 

ちょうどいい高さの棚の上は、ついついモノを置いてしまいたくなりますが、置きたくなる高さということは、作業がしやすい高さでもあります。収納ばかりに気がいって忘れがちな作業スペースですが、効率を上げるうえでは欠かせません。また見た目を考えても、棚の上にごちゃごちゃとモノが置かれている職場は、決して気持ちのいい職場とは言えません。

 

棚の上は作業スペースと心得て、常にスッキリとした状態をキープしましょう。

職場の時間と手間は、すなわちコストです

 

職場の棚ひとつとっても、これだけ改善することがあるのです。このような棚が当たり前のように鎮座している職場であれば、忙しさがそのまま利益に直結しているとは考えにくく、職場全体で見た時のロスは計り知れないものがあると思われます。

 

職場の時間や手間は、それがそのままコストになります。仕事が忙しすぎて雑になっていると感じていたら、その時こそ職場改善に向き合ってみることをお勧めします。